Smart Dashとの取り組み | Innovation with Smart Dash
Verdy Sports Innovation Hubは、イノベーションパートナーとして新たに、株式会社いいんじゃ(本社所在地:東京都渋谷区、代表:渡邉勇輝、会社URL:https://einja.net/)が展開するスプリントトレーニングサービス『Smart Dash』との取り組みを開始いたします。
株式会社いいんじゃ(以下、『いいんじゃ』)は、『日本からグローバルイノベーションを起こす。』をミッションに掲げ、AIを活用した企業への『マーケティング、デザイン、開発の三刀流』のデジタルトランスフォーメーション支援を主力事業としています。加えて、創業メンバーの陸上競技経験を背景に、陸上シューズ比較サイト『Picker』や、科学的なアプローチで走りを改善する『Smart Dash』といったスポーツメディア・テック事業も運営しています。
今回の取り組みでは、東京ヴェルディの女子アカデミーチームである日テレ・東京ヴェルディメニーナ(以下、『メニーナ』)を対象に、選手個々の身体特性や走動作を可視化し、スプリント能力の向上を目的とした分析・トレーニングサポートを行います。
なぜAIカンパニーが『走りの改善』に取り組むのか
Smart Dashの根底にあるのは、いいんじゃが掲げる企業ビジョン『つまらないモノ、めんどくさいモノ、ださいモノをこの世からなくす。』という思想です。
いいんじゃは、立教大学陸上競技部出身のメンバーを中心に創業されました。競技者として活動する中で、旧来の練習方法に対して課題意識を持ち、『どうすれば怪我をせず、より速く走るための練習ができるのか』をメンバー同士で議論し続けてきたことが、Smart Dashの原点になっています。
いいんじゃの取締役でありSmart Dash事業の代表を務める井口貴文さまは、その背景について次のように語ります。
「私たちは、これまで陸上競技の現場で多くの指導者の方々から、技術や身体の使い方、競技に向き合う姿勢など、たくさんのことを教えていただきました。その経験があったからこそ、今の自分たちがあります。
一方で、自分たちが選手として競技に取り組む中で、努力しているにも関わらず怪我によって思うように成長できない、または、練習を積み重ねてもなかなか記録につながらないという経験もしてきました。また、同じような悩みを抱える選手たちも多く見てきました。このような状況への対処は、多くの指導者の方々が抱えている悩みだと思います。
陸上競技には、長年培われてきた素晴らしい指導ノウハウがあります。その一方で、選手一人ひとりの身体の特徴や動きの違いをより細かく捉え、成長をサポートできる余地もまだあると感じています。
だからこそ、これまで先人たちが築いてきた知見に、AIやデータ分析という新しい力を掛け合わせ、選手だった頃の自分たちが“あったらよかった”と思えるサービスを作りたい。そんな想いからSmart Dashは始まりました。」
スプリントが速くなる『走りの構造』を科学的に捉え、選手一人ひとりに最適化した形で改善していく。このアプローチをいいんじゃが得意とするAIやデジタルの力で実現する。Smart Dashは、そうした考え方をトレーニングに取り入れています。
Smart Dashはどのように走りを改善するのか
Smart Dashは、陸上選手が行うドリルをそのまま他競技の選手に導入するような方針は採用していません。そうではなく、まずは選手個々の筋力や神経系、柔軟性やコンディショニングなどの身体的要素を測定し、どの部分がスプリントの課題につながっているのかを特定します。そのうえで、関節角度やストライド、スプリントタイムなど、走りに関わる数値と動作の関係を分析・因数分解していき、選手ごとに最適化されたトレーニングへと落とし込んでいきます。これらを陸上競技の世界における研究や論文を学習したAIを活用しながら実現する点が、Smart Dash最大の特徴です。
その上で、Smart Dashが重視しているのがAIだけでは実現できない『人間』的な部分です。数値を測定し、分析レポートや練習内容を提示して終わりではなく、コーチが選手に寄り添い、選手の主観的な意識や感覚も包括的に理解しながら、選手が自律的に改善のサイクルを回していける状態を目指します。取り組み当初はコーチに言われたことの意図がまだ理解しきれない選手であっても、コーチが練習をやる意味や、自身のパフォーマンス、ひいては自身のキャリアに与える影響や効果を説明しながら、選手が徐々に『腹落ち感』を抱いて主体的に取り組めるようなコーチングを行います。まさに、AIが得意とする領域と人間が行うべき領域を意図的に分けて設計することで、旧来の練習とは異なるソリューションを提供しています。
なぜSmart Dashはサッカー領域に取り組むのか
Smart Dashは、当初は陸上選手向けに開発されたサービスですが、事業を展開する中で、サッカーをはじめとする球技においても『走り』に対するニーズが大きく、一方で同時に、改善を実現するためのソリューションや選択肢が十分に整っていないことが見えてきました。
特にサッカーは、Smart Dashのサービスを受けに来るジュニア世代の中で、もっとも参加者の多い競技でした。競技特性上スピードやスプリントが重要でありながらも、専門的な観点から手が付けられていないギャップが顕著な球技であると分かってきました。Smart Dashの分析・研究によると、世界的にトップクラスで足が速いとされるサッカー選手であっても、日本の中学生陸上の全国大会レベルのスプリンターと比較すると、最高速度ベースでは同等から僅差、平均速度ベースでは中学生スプリンターが上回るケースもあるといいます。(出所:FIFA Women’s World Cup 2023 『Player stats: Speed, distance, dribbling, passing and more』、Vescovi & McGuigan (2018) 『Sprint performance characteristics in female soccer players』、(財)日本陸上競技連盟『Analysis of speed patterns in 100-m sprints』)
「自分自身も昔サッカーをプレーしていたこともありよく観戦するのですが、世界のトッププレーヤーであっても“もっとこう走った方が速くなるのにもったいないな”と目につくことがあります。陸上の動きを、サッカー特有の動作の邪魔にならない形で取り入れることができれば、サッカーという競技自体がもっと面白いものになると思っていました」(井口さま)
陸上競技で培われたスプリントの知見を、サッカーの競技特性に合わせて応用する。そこに、Smart Dashと東京ヴェルディが共創する意義があります。
なぜSmart Dashは東京ヴェルディと協業するのか
前述の通り、Smart Dashにとって、サッカー領域への本格的な展開は、以前から取り組みたいテーマの一つでした。その中で、東京ヴェルディとの協業が始まります。
「サッカーは、私たちが以前から本格的に取り組みたいと考えていた領域でした。その中で、走りの重要性をサッカーの新たな価値として捉え、チームの現場に実際に取り入れる判断をしていただいたのが、メニーナでした。当初は女子だから・男子だからと性別をもって区分けることはしていませんでした。 一方で、女子選手の方が筋力的にも適切なトレーニングを行うことでタイムが上がりやすいデータが内部にもありました。ただし、そのためにはデータを取って終わりではなく継続的なモニタリングが重要になります。メニーナという日本でトップ水準の女子サッカー選手たちを、チーム単位で長期的・継続的に見させていただく機会は、我々の強みや特徴をこだわりながら出せるのではないかと考えました」(井口さま)
Smart Dash と東京ヴェルディは今後どのような共創を行うのか
今回の取り組みでは、まずメニーナに所属する数名の選手たちを対象に、測定・分析・トレーニングサポートを実施しています。計測から約2か月の段階で、選手たちの動きや取り組み方にも少しずつ変化が見られ始めており、今後は選手自身がトレーニングの意味を理解し、日常の練習の中でも改善に取り組める状態を目指していきます。
井口さまは、今後の展望について次のように語ります。
「まずはメニーナに所属する数名の選手たちですが、走りやスプリントを改善することで、自分たちの可能性が広がることを感じてもらいたいです。諦めていたポジションやキャリアが叶うかもしれないと、選手にもスタッフにも広く言えばサッカー界の皆さんにも知っていただきたいです。また、コーチの皆さんとも交流して、普段の練習や困りごとなども一緒に揉みながら良い連携ができればと思います。選手個々に留まらず組織単位でスプリントの効果や必要性を理解して、その改善にフォーカスするようなチームはまだ多くないと理解していますので、そのようなチームを作る一助になれればと考えています」
「点として終わるプロジェクトではなくて、今回のメニーナとのプロジェクトを通して、選手たちのキャリアにとっても、東京ヴェルディというチームやクラブにとっても、可能であればサッカー界全体にとってもインパクトとなるような、線としてつながる取り組みの起点になれることを期待しています」
今後、Smart DashとVerdy Sports Innovation Hubでは、メニーナでの取り組みを起点に、スプリントトレーニングの新たな可能性を検証してまいります。また、一定期間の取り組みを経た後には、測定データやフォームの変化などをもとに、プロジェクトの進捗や研究成果を本サイト上でも発信していく予定です。
Verdy Sports Innovation Hubとは
総合クラブである東京ヴェルディが、その出自であるサッカーを中心に多岐にわたるスポーツを題材として、社会全体やスポーツの現場に新たなイノベーションを創出するエコシステムです。多様なステークホルダーの皆様を巻き込み議論や研究を重ねる中で、社会の課題解決に挑戦すると同時に、得られた知見や形成された繋がりをもとに人材の発掘・育成・輩出に取り組みます。設立の背景や取り組み事項については、以下のリンクをご覧ください。